「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」で有名なハガレンの疑問

「鋼の錬金術師」という漫画作品をご存知でしょうか?

その作品には「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」という有名なセリフがあります。

これは自分の家族を材料に合成獣(キメラ)を錬成したキャラが主人公に問い詰められていき、本性現したときに発言したセリフです。

このセリフが登場するエピソードは作品内でも特に有名で、一般的には衝撃的で悲しくて救いようのないエピソードとして知られています。

そこでこの有名なセリフが登場するエピソードの疑問について考察してみました。

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鋼の錬金術師はどんな話なのか

主人公のエドワード・エルリックとその弟のアルフォンス・エルリックは亡くなった母親を錬金術で生き返らせようとしました。

しかし母親は生き返らせることはできず、エドは右腕と左足を失い、アルは肉体すべてをうしなってしまいました。(エドが右腕を失ったのはアルの魂を錬成し鎧に定着させたため)

エドはアルの体を取り戻す方法を探すために旅に出たというのが鋼の錬金術師のざっくりとしたあらすじです。

アニメ化したり、ゲームになったり、最近では実写化もした有名な漫画で、人気が高くとても面白くておすすめです。

読んだことない人はぜひ読んでみてください。

「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

この漫画には有名なセリフとエピソードがあります。

原作漫画の第5話で「錬金術師の苦悩」というサブタイトルがついています。

アニメなどの作品では少し内容が違うかもしれません。

エルリック兄弟はマスタング大佐に生体錬成に詳しい錬金術師を紹介してもらいます。

彼の名はショウ・タッカーといい、娘のニーナと飼い犬のアレキサンダーと一緒に暮らしていました。

タッカーは2年前に人語を使う合成獣を錬成したことで国家錬金術師になり合成獣の権威と言われているそうです。

しかし国家錬金術師は毎年ある査定で評価されないと資格を失ってしまうらしく、タッカーは去年の査定で良い評価をもらえなかったため後がない状況でした。

兄弟は自分たちの事情をタッカーに話した後、研究室や資料室を見せてもらいました。

その日は時間が遅くなったので帰ろうとしたとき、ニーナとアレキサンダーと出会い仲良くなります。

ニーナは2人のことを「お兄ちゃん」と呼び、アレキサンダーもエドにとてもなついていました。

それから2人はしばらくタッカーの資料室に通い、アルの体を取り戻すための資料を探していました。

資料を読んでいるときにニーナから2年前に母親が実家に帰ってしまったことを聞き、寂しそうだと思った2人は彼女たちの遊び相手になってあげていました。

そしてある日いつものようにタッカーの家に行くと、タッカーは人語を理解する合成獣を完成させたと言い、その合成獣を兄弟に見せます。

タッカーに指示された合成獣はエドのことを「えどわーど」と呼んでいましたが、最後に「おにいちゃ」と呼びました。

ここでエドがあることに気づきタッカーに質問します。

「タッカーさん 人語を理解する合成獣の研究が認められて資格とったのいつだっけ?」

「ええと…2年前だね」

「奥さんがいなくなったのは?」

「………2年前だね」

「もひとつ質問いいかな」

ここであの有名な「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」というセリフが出てくるわけですね。

なんとタッカーは自分の娘と飼い犬を使って合成獣を作ってしまったのです。

しかも2年前にも自分の妻を使って合成獣を作っていたのだから今回で2度目になります。

この後タッカーは人の命を弄んだことに対してエドに責められるのですが、人体錬成という禁忌を犯したエドも自分と同じだと言って開き直ってしまいます。

漫画では数ページ前では元気に遊んでいたニーナとアレキサンダーが合成獣にされてしまったことが明らかになり、かなり衝撃的な展開だと言えます。

合成獣になってしまったら元に戻す方法はありません。

このエピソードは作品内でも特に内容が重く、エルリック兄弟が錬金術師のあり方について考えるきっかけになりました。

衝撃の大きさや内容の重さ、何よりも悲しくて救いようのない話であることからこのエピソードはとても有名になり、鋼の錬金術師を知らない人でもこのエピソードは知っているという人も少なくないと思います。

またこのエピソードが有名になりすぎて「ニーナとアレキサンダーどこに行った?」のシーンのセリフを状況に応じて改変するネタも流行っているようです。

わざわざ見せなければバレなかったのでは

このエピソードのタッカーの行動には疑問があります。

それはなぜタッカーはエルリック兄弟にわざわざ合成獣を見せたのかというところです。

原作漫画ではいつものようにタッカーの家に行きますが、返事がないことを不審に思いタッカーを探します。

ようやく暗い研究室でタッカーを見つけたところで、兄弟は合成獣を見せられるわけです。

歳こそ若いですがエルリック兄弟は人体錬成を成功させた錬金術師です。

しかも2人はニーナとアレキサンダーととても仲良くしていました。

そんな彼らに合成獣を見せなければ、それを作るのに自分の娘を使ったことがバレることはなかったはずです。

バレなければ、自分の地位を危ぶめることもありませんでした。

一体なぜタッカーはエルリック兄弟に合成獣を見せたのでしょうか?

絶対にバレない自信でもあったのでしょうか?

メタなことを言うと、このエピソードはエルリック兄弟に命の重さや錬金術師の責務を再認識させるために必要だったからということになります。

しかしそれでは少し納得できないので、なぜタッカーはエルリック兄弟に人語を理解する合成獣をわざわざ見せたのかを原作漫画の範囲内で考察してみます。

タイミング悪くエルリック兄弟に見られた説

研究室でタッカーが合成獣の錬成に手こずっていたところをエルリック兄弟に見つかってしまったため、苦し紛れにごまかそうと合成獣を見せざるを得なかった説です。

この日兄弟がタッカーの家を訪ねたときに返事がありませんでした。

このときタッカーは錬成の真っ最中で兄弟の訪問に気づいていなかったとすれば辻褄が合います。

タッカーは「査定にまにあってよかった」と言っているので、かなり時間に追われていたことがわかります。

しかしこの説にはいろいろと問題があります。

まず合成獣を見られてタッカーが焦っている様子がまったくないところと、アルが「今日もよろしくお願いします」と言っていることから突然訪問したわけではないというところです。

そもそも兄弟はここ最近毎日タッカーの家に通っていたので、彼らが訪問してくる時間くらいは予想できそうですけどね。

これらのことからこの説が正しい可能性は低そうです。

子供だからバレないだろうと思ってた説

エドはこの時点で15歳、アルは14歳です。

娘がいる年齢であるタッカーから見れば2人はまだまだ子供です。

エドは背が低いですし、彼から事情を聞いていたのでアルの鎧の中身がないことも知っていた可能性は十分にあります。

それにタッカーは「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」と言っています。

このセリフは子供に見破られたことに苛立ちを隠せないということを意味しているのではないでしょうか。

きっとエルリック兄弟と言えどもしょせんは子供だから合成獣を見せてもバレないだろうと思っていたのでしょう。

現にアルはエドがタッカーを問い詰めるまでそのことに気づいていなかったように見えます。

エドも自分と同じ国家錬金術師ですから、彼に推薦してもらえれば査定の評価も良くなると思っていたのかもしれませんね。

最初から開き直ってた説

たぶんこれが正しいんじゃないかなと思います。

エドがいろいろと質問をしてきたところで、タッカーはごまかさずに正直に答えていますよね。

あの場面は頑張ってごまかせば何とかなりそうに見えませんか?

例えば奥さんがいなくなったのは資格をとった後だと嘘をついたり、ニーナとアレキサンダーは出かけていると嘘をついたりと逃げ道はいくらでもあったはずです。

相手は子供で少なからずごまかせる可能性があったにも関わらず、質問に正直に答えるあたり、タッカーは最初から開き直っていた可能性が高いです。

その証拠に後のエドとタッカーのやり取りを見ると、タッカーが悪びれている様子はありませんし、身柄を拘束された後も「なんで誰もわかってくれないんだろうなぁ」と言っています。

また研究が思うように進まずに精神的に追い詰められていたことがわかるシーンも見られますし、タッカーはエルリック兄弟が人体錬成という禁忌を犯したことを知っています。

つまり家族を錬成の材料に使ったことを見破られないようには心がけてはいましたが、仮にバレたとしても同じく禁忌を犯したエルリック兄弟ならこのことを黙認せざるを得ないと思っていたので、合成獣を見せたというところでしょうか。

タッカーから見ればエルリック兄弟と自分は同罪だと思っていたようですからね。

まとめ

タッカーがエルリック兄弟にわざわざ合成獣を見せた理由は、もし見破られたとしても自分と同罪のエルリック兄弟はこのことを黙認せざるを得ないからであり、しょせん彼らは子供だからとナメていたからだと思います。

合成獣を見られて苦し紛れに言い訳をしているようには見えないし、2年前も妻を使い合成獣を作っているので、最初から開き直っていた可能性が高いです。

ちなみに原作漫画でタッカーはこの後、傷の男(スカー)によって合成獣と一緒に退場させられてしまいます。

傷の男は復讐目的で国家錬金術師を探し回っていたため、たとえタッカーが何も悪いことをしていなくても、彼に狙われる理由はあったわけです。

つまり仮にエルリック兄弟がタッカーの悪魔の所業に気づかなかったとしても、彼はいつ退場してもおかしくなかったと言えるのです。

しかも物語が進むともっとレベルの高い合成獣が登場することから、軍は裏で行われていた合成獣の研究を隠蔽するために、あえてタッカーを合成獣の権威として祭り上げていたのではないかと、エドとマスタングが後に推測しているそうです。

この一見すると暗くて悲しいエピソードには、エルリック兄弟にトラウマを残すだけではなく、上記のような裏設定がしっかりと盛り込まれており、本当によく作りこまれた作品なんだと感じました。